あおい空勁気功教室

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達人にお会いした話(大東流合気柔術)

皆さんこんにちは。

今回は、以前にお世話になりました大東流合気柔術」の達人に出会った時の体験談です。

 

先生にお会いしたのは、10年以上前になります。

先生は「大東流合気柔術」の団体を主催されていて、テレビにも何度か出演されていました。

武術の世界では、もう大変有名な方でした。

当時、私も数ヶ月だけ練習に参加させていただきました。(だいぶ短いですが 笑)

 

当時は雑誌やDVDを観たりして、少年のように先生に憧れていました。

なんとか勇気を振り絞って連絡をして、稽古を見学させていただきました。

現代でも活躍されている武術の達人、まさに生きる伝説です。

どうしてもその技を受けてみたかったのです。

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当日は、だいぶ緊張しながら指定された武道場に着きました。

先生に挨拶をすると、優しく声をかけて接してくださり、見学のできる場所を教えてもらいました。

先生は当時すでに御高齢で、片方の足が不自由なようで杖をついて歩いていました。

 

しばらくすると、稽古が始まりました。

準備運動の後、武道場の隅に、何人かの「技をかける人」が立ちます。

その前に整列した人が順番に攻撃をしかけていき、「技をかける人」はその攻撃を利用して技をかけて、相手を崩したり、投げ飛ばしたりします。

印象としては、力を使って投げる感じではなく、相手の力を利用して重心を崩して、相手が勝手に崩れていくような、不思議な技が多いです。

投げられる側の皆さんも柔らかい受け身で、とても美しい。かっこいいのです。

先生も時々「技をかける人」にまわり、片手はパイプ椅子を掴みながら技をかけ、バタバタと弟子を投げ飛ばしています。とても不思議な光景です。

 

私は見学者ですので、正座をして目を凝らしながら稽古の様子を見学していました。

すると先生が、杖を片手に近寄ってきました。

先生「疲れるから、足を崩して見学してください。」

と、笑顔で声をかけてくださります。

私「有難うございます。もう少ししたらそうします。」

先生「かしこまらず、そうしてくださいね。」

私「はい。有難うございます。」

…とはいえ、なにせ憧れていた先生の前です。とても緊張していたのを覚えています。

どうしたって、かしこまってしまいます。

 

しばらくすると、先生がまた近寄ってきて、、

先生「ほら、疲れるから。足を崩して大丈夫だから。」

私「は、はい…。では、そうさせていただきます。」

…申し訳ない。。

二度も声をかけさせてしまった。。

今回はすぐに足を崩しました。

先生、優しい笑顔だな〜、、。

あんなに凄い技を使う達人なのに。

今までお会いした達人は、みんな共通して優しいです。

 

それから、すぐに入門して数ヶ月の間、一緒に稽古させていただきました。

仕事が忙しくなり、結局すぐに足が遠のいてしまうのですが。。

稽古内容は厳しかったです。

準備運動をして、まずは受け身の練習をします。

倒れては立ち上がり、また倒れては立ち上げる。

これがすでにきつい。

昔みたいな体力がありません。

体が全くついてきません。

慣れてくると、まずは攻撃をする側に整列します。

攻撃を仕掛けて、技を受ける側です。

 

先輩達は皆さん熟練者揃い。テンポ良く、流れるように稽古が進みます。

順番になり私も先輩に向かっていきます。

たしかに技がかかり、簡単に投げられてしまいます。

仕組みはよくわかりませんが、重心が崩されてしまいます。

さて、今度は私が「技をかける人」になりました。

先頭に立った先輩が、上から攻撃してくるのを受けて、、崩す!!

…あれ??

…全く崩れない。。

教わった通りにやってるつもりですが、何度かやってみても、、全然技がかかりません。。

指導員の方が色々とアドバイスをして形を直してくれるのですが、うまく技がかかりません。

テンポ良く進んでいた稽古が私たちの列だけ、新人おじさんのせいでストップしてしまいました。

(や、やばい…。みなさんに迷惑がかかっている。。)

どんどんと気持ちが焦っていき、体は緊張してしまいます。

悪循環です。

 

すると、パイプ椅子に座っていた先生が近づいてきて、私の腰の辺りを、すっと触りました。

バタンっ!!!

目の前には、どうしても崩す事の出来なかった先輩が、床に倒れていました。。

(これっ、私がかけたの!?)

っていうか先生、何したんですか??

先生は悠々と椅子に戻ると、指導員の方に教え方が良くないというような内容の注意をしています。

いや、、先生、出来ないのは私の不器用のせいなんですよ。。

なんか、すみません。。

 

それ以降は、やはり投げたり崩したりと挑戦しましたが、出来たり出来なかったり。

習い始めで、まだ理論ももわからない事が多かったのですが、技術の奥深さを痛感しました。

 

そして稽古は終盤になりました。

先生が「技をかける人」になり、その列に私も並ぶことができました。

ついに、ついにあの伝説の達人の技を受けられる時がきた…。

うおぉ〜〜!!!

 

テンポ良く先輩達が投げられていき、すぐに自分の番がきました。

先生に近づいていき、肩のあたりをドンッ!と押します。

先生「もっとちゃんと押してください、稽古だから。」

私「はい、すみません。。」

とはいうものの先生は御高齢です。当時は70歳を過ぎた位でしょうか。歩行時には杖をついて歩いてるのも見ています。

(強く押せと言われても、、でもやるしかないか。。)

武道の稽古に遠慮をしてはいけないと思い直しました。

当時の私は体重が約100kgを越えるヘビー級です。

小走りで近寄りながら、先生の肩をグッと押し込んで!、、

押し込んだつもりでした。。

「あっ!」

そこにはもう先生の肩は無く、重心を奪われた私はクルッと回りながら倒されて、気がつくと武道場の天井を見上げていました。

…何をされたのかさっぱりわからない。。

でもこの技術がとてつもなく凄いことが、技を受ける事でよくわかりました。

小さな人間が、魔法のような技で大男を投げ飛ばす、「小よく大を制す」を初めて体験させていただいた日でした。

 

若い頃に空手を学んでいた時は、道場にもまじめに通わずに自己流で空手を稽古して、勝手に色々な試合に出ていました。

当時は総合格闘技という言葉もない頃なので、格闘技が好きな人が集まると、実際に闘えばマイクタイソンが最強だとか、路上では相撲には敵わないとか、やっぱりプロレスが一番だよとみんなで盛り上がる。そんな時代でした。

 

そのなかで古流の武術や、中国拳法は型しかやらないから使えない。

そんな風に思われていた時代でもありました。

実際に試合の場に出てくると、当時は簡単にやられてしまう方が多かった。

しかし年齢を重ねて、色々学ぶ中である考え方に行きつきました。

遥か昔、刀や槍、弓を使って命をかけて戦争をしていた日本の武士。

保鏢というプロの武術家を雇って、生きるために商売をしていた中国。

その時代に磨き上げられた武の技術は、まさに生きるための技術。命をかけて武の道を歩んでいた先達がいた時代。

その武術が弱い訳がない。真剣さが違うと。

先生の技を受けた時には、その得体の知れない恐ろしさの一部を感じる事ができたようで嬉しかった。

今はそのお弟子さん達が、YouTube等のメディアを通じて活躍されています。

それを見るのが好きなのは、たくさんの人にそれが伝わる喜びが自分の中にあるのかもしれません。

 

その後先生がお亡くなりになったのを、当時の武術雑誌を見て知りました。

今もきっとあの優しい笑顔で、雲の上からお弟子さん達を見守っているのではないでしょうか。

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…思い出しながら書いていたら、ずいぶん長くなってしまいました。

最後までご覧いただき、有難うございます。

それではまた!