皆さん、突然ですが神様の存在を信じますか?
神様と言いましても、大人の話す宗教的な神様ではなくて、子どもの頃のようにまだあまり知識もない時に感じていた漠然とした神様。
(神様、どうかお願いします)
と純粋にお願いをしていた、あの神様のお話です。
あれは小学校3、4年生の頃だったと思います。
当時、私は昆虫が大好きな子どもでした。
アリンコを捕まえては透明な容器に黒い紙をまいて飼育して、アリの巣を観察したり、友達とお互いの家の昆虫図鑑を持ちだして、どっちがたくさん載っているか競争したり。
バレンタインで初めてチョコをもらった時(その時だけ珍しく貰えました 笑)にも、恥ずかしさを紛らわすために、、
「では、虫の研究があるからそろそろ帰るね。。」
と言ってみたり。
自他共に認める、昆虫マニアでした。
当時は東京の北区に住んでいて、毎年夏になると、田舎のおばあちゃんの家に行くのですが、私の虫好きを知っていたおじちゃんが、沢山のカブトムシやクワガタを捕まえておいてくれました。
また北区の自宅周辺でも、桃を販売する車が定期的に来ました。焼き芋屋さんのように独特なアナウンスとともに回ってきて、その車で桃と一緒にカブトムシやクワガタを販売していました。
そんな環境でしたので、都内に住む子どもとしては、毎年だいぶ恵まれた昆虫ライフを過ごしていました。
中でも特に好きだったのはクワガタです。
いつも虫かごに近所でもらったオガクズ(畳屋さんにいくと分けてくれました)を敷いて、拾った木をセットして餌をあげて育てます。
それ自体も楽しかったのですが、その頃子ども達の間で流行っていたのは、自分の飼育した虫と友達の育てた虫を闘わせる遊びでした。
ムシキングのリアル版です。
細めの木に、カブトムシとクワガタを向かい合わせで置くと前進した虫が自然と闘いを始めます。
間に餌を置いておけば、それを巡ってさらに過激な闘いになる事もあります。
今だと動物虐待だ!!と怒られそうですが、子どもの時のあのドキドキ感。。
今までの人生でも中々感じられない程の高揚感がありました。
とある日、家族で外出してご飯を食べて、量販店に寄る事になりました。
虫や動物が好きな私は、ペットコーナーに近寄ると愕然としました。
そこには張り紙で、、
〈ミヤマクワガタ入荷しました!〉
と言う文字を見つけました。
(…ミ、ミヤマクワガタがいる!!)
驚きで、鳥肌がたちました。
虫に興味がない方には、なんの事だかわからないかもしれませんが、当時都内にいてミヤマクワガタを見ることは珍しかったと思います。
よく手に入るのはノコギリクワガタで、恵まれた虫ライフの私でも、たいがいはノコギリクワガタ。
時々ヒラタクワガタが混ざりますが、99%がノコギリクワガタでした。
そんな時代に出会うミヤマクワガタです!!
昆虫図鑑でしか見たことない!!!
フォルムがまたカッコいいんです。
ミヤマクワガタ↓ (超イケメン)
ノコギリクワガタ↓ (カッコいいけどよく見かける)
興奮した私は、両親の腕を引っ張りその素晴らしさ
と希少性を熱弁しました。
すると意外にもあっさりミヤマクワガタを買ってくれる事になりました。。
今思えば、勉強にもなるでしょうとか思ったのかな〜。
無事に購入したミヤマクワガタを、大事に虫かごに入れて最高の餌をあげました。
そうだ、名前をつけなきゃ。
うん、クワマンみたいでカッコいい。
その日は最高の気分で眠りにつきました。
翌日、朝からもうテンションがあがって仕方ありません。
学校の授業が終わると、私は大好きな芸能人を連れ歩くような気分でミヤマンを連れて、意気揚々と放課後の闘いの場に向かいました。
団地の踊り場に集まった子ども達。
初めて見るミヤマクワガタの姿に、すでにミヤマンの虜になっています。
キラキラした皆んなの羨望の目。
これぞまさにミヤマンジック。
そしてついに、ミヤマンのデビュー戦です。
まずは小手調べ。
小さめのノコギリクワガタと向かい合わせてみると、、
ガッガッ!…コロンっ!!?
呆気なく木から落とされてしまいました。
あれ?…想像していたような、勇ましいミヤマクワガタはそこにはいませんでした。
心なしか木を掴む脚力も弱い気が…。
その後も色々闘わせてみましたが、連戦連敗です。
見た目と強さは比例しないのか、はたまたこの個体が弱いだけか。。
理由はわかりませんが、子ども達のミヤマンへの興味はすでに失せつつありました。
廊下のすみで、虫かごから出したミヤマンを止まり木に置いて眺めていると、その武将のようなフォルムが逆に物悲しい。。めちゃくちゃ強そうに見えるのに。
…すると突然、ミヤマンは外側の羽根を開きました。
そして内側の羽根を震わせて空に飛び立ちました。
「あっ!!!」
…それは一瞬の出来事でした。
飛び立ったミヤマンは空高く飛んでいきます。
慌てて追いかけますが、遥か上空に飛ぶミヤマン。
なんとか目を凝らして追跡します。
すると、3棟となりの団地の脇にある背が高い木に止まったようです。
しかしその姿は枝葉に隠れてもう見えません。
夕方、私は家に帰ると一言も話さず食卓につきました。
さすがに様子がおかしいと察した両親に、何があったのか事情を聞かれて、私はミヤマンとの別れを話しました。
昨日の今日ですので、怒られる事も覚悟していましたが、両親は優しく話しを聞いてくれました。
あまりにも落ち込んでいる息子に、、
「明日、近くを探してみたら会えるかもしれないよ。」
と声をかける両親。
今思えば、、
(外にクワガタ一匹逃して、見つかるわけない!!!)
と一喝したいとこですが(笑)その日はその言葉に励まされて、眠りにつくのでした。
翌日、学校から帰るとすぐにミヤマン探索の旅が始まります。
昨日の団地の木の周辺を探し、近くの公園、そして学校の周りまで。
とにかく木があるところを中心に探索しましたが、見つかるわけもありません。
この広い町の中で、たった一匹のクワガタ虫。
見つけた人がいても、子どもがいれば喜んで自分で飼うでしょう。
夕暮れが近づいた頃、自宅のそばの空き地に着きました。そこには木はありませんが、ブロックで囲われた花壇がいくつか並んでいました。
探し疲れた体で、ふらりと立ち寄った空き地。
ふと花壇に目をやると、ブロックの穴の上に蓋をするように石が置いてあります。
何気なく、本当にただ何気なくその石をどかして穴を覗きこむと、、、
「ミ…ミヤマン!!!」
ブロックの穴の中には、何食わぬ顔?をしたミヤマンがいました。
すぐにミヤマンを虫かごにいれると、元気を取り戻した私は夕暮れの中帰路についたのでした…。
…とここで、、
「そんな都合のいい話があるか!?」
と思われますよね。
はい、私もそう思います(笑)
でもね、本当なんですよ。。
誰か映画化してくれる人はいないかな~(笑)
その時は驚いて終わりでした。良かった良かったって。
でも、大人になってこの件を思い出した時に、なんて偶然なのだろうと感じたのです。
これはもしや、神様の仕業かも…って。
私がとにかく昆虫や小動物が大好きな子どもだったので、不憫に思ったのかな~って。
(ハッ!?待てよ…。)
しかし、今これを書きながらもう一つのパターンにも気づいてしまいました。
「両親があらたに買い直した説」です。
息子があんなに落ち込んでいたから、サンタさん的なサプライズを考えて準備していたのを見つけてしまったのでは。。
…あ~、、ますます謎は深まるばかりです。
真実はどれなんだろう??
今度実家に帰ったら聞いてみなきゃ。
それではまた!
最後までご覧いただき有難うございます。